記憶を新鮮なままで

こっちでもりんごアイコンです。見たまま聞いたまま感じたままを咀嚼しきる前に留めておきたい。コメントくれるとめっちゃ喜びます。

グランギニョルで負った深い傷、サントラに塩を塗りたくられたので治りません

 

初めに断っておきますが、これはグランギニョルの「最後の場面」について喋りたいがためにTRUMPとグランギニョルのネタバレを前提として垂れ流してるブログです!気をつけて!

 

今日は本当は早く寝なきゃいけない日なんだけど、どうしても眠れないからブログを書き始めました。なんで眠れないんですか?それはね、今日のお昼に繭期音源萬集を聴きながら作業をしていたからです。「TRUMP」の青春にも思えるクランでの活発な日々を思わせる曲集も、「マリーゴールド」の強いけれど重い霧を纏ったような曲集も、「LILIUM」の儚く優しく洗練された曲集も本当に素晴らしいんです。でも私の頭の中ではずっと今「グランギニョル」の「愛という名の呪い」が響き渡っていて、心にグリグリと「モヤモヤとしたとんでもなく大きな不安」がねじ込まれている感覚なんですね。眠れるわけがない!

 

まずグランギニョルがどういう話かを説明しますと、「ダリ=デリコ」「ゲルハルト=フラ」という2人の超特権階級貴族が、自らの家を守りながら自分にとって大切なものを守り抜こうとする物語です。嘘です。いや嘘じゃないんだけど足りなさすぎる。とにかくこのグランギニョルはあらすじを一言で表せないんですよ。というのもグランギニョルは「TRUMP」という大きなシリーズものの1つであって、この一連の物語の中には共通の特殊な世界線が存在しているんですね。その世界線が綿密に絡み合った中で成立する物語なので、他の物語を取り出してきたりしないとうまく説明できないわけです。ということで簡単にこの特殊な世界線をとりあえずネタバレ無し(全部に共通する前提知識)で説明しますと、

①この世界線には人間の他に吸血種がいる。

②人間と吸血種の混血はダンピールと呼ばれ、人間と吸血種の双方から忌み嫌われる。

③青年期の吸血種には「繭期」と呼ばれる、著しい情緒不安定を起こす時期が訪れる(人間における思春期のハイパーエクストラバージョン。人によっては幻覚や幻聴や特殊能力といった症状もある)。

④繭期の症状が激しい吸血種は(ダンピールも)「クラン」という学校のような施設に入れられる。

⑤ダンピールは長生きできず、その殆どが繭期を超えられないまま死んでしまう。

⑥全ての吸血種は共通した1人の祖先を持っている、という伝説があり、彼の名は「TRUE OF VAMP = TRUMP」と呼ばれる。TRUMPは不老不死であり、何千年も生き続けていると信じられている。

⑦吸血種が人間を噛むとその人間は死んでしまうが、稀に吸血種に突然変異する人間もいる。

⑧吸血種が吸血種を噛むと、噛んだ者と噛まれた者との間に絶対的主従関係が生じてしまう。これを「イニシアチブ」と言い、TRUMPは全吸血種のイニシアチブを掌握していると言われている。

など。。

 

私はTRUMPを履修してからグランギニョルを見たので、TRUMPで得た知識をここに更に足すと(ガッツリネタバレです!!)、

 

⑦TRUMPの正体はクランの教師である「ティーチャークラウス」であり、人間のメリーバルと交わったために人間に殺された「アレン」という繭期の青年をずっと忘れられないでいる(アレンは永遠の命を拒み何百年も前に死んだ)。

⑧超特権階級であるデリコ家の次男「ウル=デリコ」(繭期)は実は(特権階級にあるまじき)ダンピールであったが、早死にする運命にあることから死への恐怖を強く感じ永遠の命を求め、TRUMP伝説にすがるようになった。

⑨ダンピールであるがゆえにクランの仲間から忌み嫌われる「ソフィ=アンダーソン」(繭期)はウルの友人であるが、実はアレンとメリーベルの子孫であった。

⑩何百年も前から忘れられないアレンのにおいをソフィに感じ取ったTRUMPは、自分にすがるウルをゴミ同然に無視した上で、拒絶するソフィに無理矢理永遠の命を与えた。

⑪ソフィは永遠の命を得たが、ウルに永遠の命を授ける力は残念ながら有しておらず、ウルは息絶えた。

 

みたいな感じですかね(TRUMPざっくり!)

 

これを踏まえて、さあグランギニョル(やっとだよ)。

中身をめちゃくちゃ端折ったひどいネタバレの仕方をしますがご了承ください!私がズドーーンと心を沈められた最後の場面について今話したいのに、最後だけ言ってもわけわかんないのでなんとなく分かるように間の流れだけ言っちゃいます。

 

最初の最初に述べた「ダリ=デリコ」。この物語「グランギニョル」の主人公ですが、名前から察しがつくように彼はTRUMPの主人公の1人「ウル=デリコ」の父親です。デリコ家の当主であるわけです。デリコ家は本当に超が幾つあっても足りない特権階級の家なので、息子が侮蔑対象のダンピールであるというのは普通あり得ないし、許されません。しかし、ウルはダンピールです。つまり、「ダリが人間の女性と成してしまった子」or「貰い子」ということになりますが、正解は「完全な貰い子」です。ウルはデリコ家の血を継いではいないんですね。

じゃあ、誰の子か??という話なのですが(盛大なネタバレをします)、デリコ家に匿われていた「スー」という人間の女性と、「マルコ=バニタス」という殺人鬼(吸血種)との間の子が、ウル=デリコです。なぜスーと殺人鬼との間に子がいるのか…というのは「ダミアン=ストーン」というこれまた説明が面倒すぎる存在のことを説明しなきゃならないのでちょっと端折りますが、とにかくなんやかんやあって、ウルを産んだ少し後にスーは殺されて死んでしまいます。(なんやかんやありすぎた)

死ぬ前にスーはダリに「この子をウルと名付けて」と言い遺します。この「ウル」という名前も業の深い名前で……という話もさっきのダミアン=ストーンの説明がないと難しいから端折らせていただきますが、とにかくダリは死んで行ったスーから、この生まれたばかりの赤子を託されたわけですね。

 

ここからが本題です。(ここからもなんやかんやあって〜とか滅茶苦茶な省略の仕方をしますが、さっきと同様「ダミアン=ストーン」という存在を説明できたら解決する案件です。でも説明すればとんでもなく長くなるし他にも人物出さなきゃならないので端折るね、ごめんね)

 

殺人鬼マルコ=バニタスはウルの実の父親ではありますが、なんやかんやで元の人格を失っています。そして彼は「グランギニョル」という「究極に美しく残酷な絶望」を生み出すことを使命としているのですが、彼の手によってここに、とんでもない「「グランギニョル」」が生まれます。

生まれたばかりの赤子、それも実の息子のウルの首をマルコは力一杯噛んでしまうのです。はい、イニシアチブが生じますね。そこでマルコは「ダンピールとして生涯、死ぬまで死の恐怖に怯え続けながら生きろ」とウルに命令するのです。意思とは関係なく噛まれた者は噛んだ者の言うことに絶対服従なので、この生後間もない時点において、ウルは死に怯えながら生きてゆく運命を背負ってしまったわけです。あまりにも残酷。ここから何にも染まっていけるはずの赤子を、絶望の色に染めてしまったわけですから。その後マルコを殺しウルをその手に抱いたダリは、ウルをデリコ家で引き取ることを決めます。そして、ダリもまた、ウルの首を噛んでウルのイニシアチブを掌握します。そして「負けるな、負けるな」と言い、物語の幕は閉じます。

、、、

この「負けるな」という絶対命令、どう思いますか?????希望のような温かさのような、まあそういう温度は確かに感じます。でもその「愛」はウルの生を「生きやすいもの」にしたでしょうか。確かに、絶望に苛まれるだけの人生ではなくなったのでしょう。温かい気持ちを持つのでしょう。しかし、「死への恐怖に怯え続ける絶対的潜在意識」と「その運命に負けてやらないという強い意思を持つ、という絶対的潜在意識」が同時に存在するって絶対苦しいはずなんですよ。ダリが命じた「負けるな」は温かさのようであって悪気の欠片もないけれど、ウルに対して「葛藤し続けろ」というわけでもあるんですよ…………まあダリが絶対的に悪いわけじゃないけど!(悪いのはTRUMPなんだけど!)とはいえこのイニシアチブは「ダリのエゴ」と言わざるを得ないですよね。ダリにとっては最大の愛情でも、ウル自身に与えられたものは結局「踠き苦しむ宿命」なので。ウルは死に物狂いで「恐怖」と「戦う」一生を送らざるを得ないわけです。強く感じる死への恐怖に打ち勝とうとする力、絶対的負と絶対的正の両方に強く潜在的に引っ張られ、強く葛藤しながら生きていかざるを得ないわけです。まるで地獄のような。そして実際ウルが、そういう生き方をしたというのをTRUMPで私、見てしまった………(パタリ)

 

で、エンディング。「負けるな」と赤子ウルに叫び続けるダリの後ろで流れている歌の名前、「愛という名の呪い」だそうです。ウワ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!ダリの深い深い愛情は、赤子のウルにとって呪いにしかならなかったんですね、結局!!というかダリにとってもそれしか出来なかったはずだから、本当にどうしようもなかった。どう足掻いてもウルの人生が「グランギニョル」なのだというオチ。くるしい……TRUMPでのウルを、強がりだけれど誰よりも死に怯え続けソフィやTRUMPにこちらの心が痛むほどすがり、だけれど蝶になれない繭のまま弱って死んでゆくウルを愛してしまったので余計に(しかも早乙女友貴)……

 

というのが全部、私は「回旋するトラジェディ」「愛という名の呪い」を聴くとドワァーーっと心に渦巻いてしまうんですね〜〜〜ウル( ;  ; )ウル( ;  ; )ウル……( ;  ; )ってなる。チャンチャラランチャンチャン……チャンチャラランチャンチャン………

あの、この音楽の希望と悲壮感と絶望がごっちゃまぜになった感じも最高に美しい鬱なので、本当に本当にダメです。タイトルにも書きましたが、グランギニョルで負った重い深手に超ナチュラルにめっちゃ染みるタイプの塩揉み込んできます。この歌(めっちゃ染みるタイプの塩とは)。傷、永遠に塞がらない。

ちなみにグランギニョル大好きで最高なんだけど私は視聴後何日もずっと凹んでいてかなり引き摺った(まだ今日も音楽聴くだけで眠れない)ので、精神を病みたい人、平坦な日常にでっかい感情ぶち込みたい人にはお勧めします。こちらへ来てみませんか?一緒に苦しみませんか??

 

(支離滅裂ネタバレ満載ブログでしたがありがとうございました!)

 

 

あ!ゲルハルト=フラの名前を出しておきながら一度も触れなかったね!ダリ=デリコもなんですが、超顔の良い貴族です。美の暴力+αに殴られたかったらグランギニョルを是非見てください!ちなみに私はグランギニョルのこのTHE美!といった空気も大好物だからこそこの作品にめちゃくちゃ惹かれるみたいなところがあります!とにかく美!!!!!美に次ぐ美、強い美しか存在してません!そういう作品です!

 

https://grandguignol.westage.jp/pages/1023521/cast

 

(あ!観たい人へ!円盤があるはずです!私はYouTubeの一夜限定無料配信で観ましたが良すぎたので円盤を買います)